難病になった医者の話

首都圏の公立小中高を卒業後、地方国立大学医学部へ進学、大学所在県で初期研修をした後に、地元へ帰郷し、現在は地元の病院で臨床医として働いています。

医師になって4年目の冬に指定難病である「クローン病」を発症。

約2ヶ月間にわたる入院の後、仕事復帰しました。

入院中に思ったことや療養生活についてお伝えします。

出生〜大学時代

「全置胎盤」という異常があり、出産予定日より1ヶ月近く早く帝王切開で生まれた様です。

2100gと小柄ではありましたが、特に異常はなく成長しました。

物心つく前はアトピーがひどかったようですが、物心ついてから特に困ったことはありませんでした。

食事の制限もなかったし、肌が弱くて困るとかそんなこともありませんでした。

小中学校ではサッカー部、高校では柔道部に所属し、元気に過ごしていました。高校生の頃にはチャーハンラーメンセット両方大盛りを軽々平らげるような一般的?な男子高校生でした。

地方国立大学進学後は1人暮らしになった影響もあり、食生活はやや不規則になりましたが、自炊もしながら、二郎系ラーメンを食べながら楽しく過ごしていました。

アウトドアの活動が好きで、自転車で日本旅行をしたり、バイクで西日本縦断したり、かなりアクティブな青春時代だったと思います。

症状出現?!

医学部は6年生で、6年生の12月ごろに卒業試験、2月に医師国家試験という大きな試験があります。

みんな6年生になると大学の自習室にこもって試験勉強に明け暮れます。

試験はとにかく暗記量が多く大変で、「スポンジを水でびちょびちょにして、試験会場までこぼさないように運んで、絞って帰ってくる」という例えがありましたが、これが結構しっくりきます。

試験勉強している途中で、友達とコーヒーブレイクをしながらわからない部分を教えあったり、くだらない話をしてリフレッシュしていました。

ある日いつものように友達とコーヒーを飲みながら話していると、お腹がなんとも言えず痛いなという感じがありました。

その後もコーヒーを飲むとなんだかお腹の違和感がでるということが続きました。

今考えると、それがクローン病の症状の出現だったのかもしれませんが、そんなに強い痛みでもなく、当時は特に意識もしていませんでした。(試験勉強のストレスによるしょぼい胃潰瘍の可能性もありますが…)

その後もなんとなく変な感じはありましたが、特に問題になることもなく、無事試験を突破し、卒業旅行などではっちゃける頃になると、特に気にすることもなくなりました。(今考えると、お腹の違和感に慣れて気にならなくなったような気もします)

腹痛の悪化と「機能性ディスペプシア」

無事に医師国家試験に合格し、医師となった私は、研修医として働き始めました。

研修医生活は慣れないことが多く、ストレスも多かったですが、自分のできることが段々増えていく実感もあり、忙しくも充実した日々でした。

そんな中、私の体に異変が起きました。

食事をとるとすぐお腹がいっぱいになってしまうのです。

お腹すいたと思ってご飯を食べても2〜3口くらい食べると、もうお腹いっぱいになってしまう。

調子が悪い時にはお腹も痛くなりました。

なんか変だなぁと思いながらも、調子がいい時には食事も取れるし、痛みもないので普通に生活できていました。

しかし、症状は日に日に悪くなり、調子のいい日が少なくなってきました。

腹痛もひどくなり、車の運転中に強い痛みがきて、車を止めて痛みが落ち着くのを待つといったこともありました。

消化器内科で研修している同期に話してみたところ、消化器内科の先生にすぐ伝えてくれて、診察してもらえることになりました。

血液検査やエコー検査、同期の胃カメラを受けてついた診断は「機能性ディスペプシア」でした。

教科書を見てみるとストレスが主な原因で胃もたれた胃痛が持続する病態。早期膨満感やみぞおちの痛み、灼熱感を主訴とする。と書かれていました。

それを聞いた私としてはその通りだ!と思いました。

研修医というストレスのせいでこうなってるだろうし、すぐお腹いっぱいになってしまう早期膨満感もピッタリだし、痛みもあるぞ!と私の悩みが全部教科書に書いてあって感動すら覚えました。

機能性ディスペプシアに聞くという薬と漢方薬をもらってしばらく飲むと痛みや症状は改善しました。

その後も時々、痛みや早期膨満感が出ることがありましたが、「キタ!ディスペプシアだ!」と思い、あまりの薬を飲んでしばらくするとおさまることを繰り返していました。

入院と「虫垂炎」

2年間の研修医生活を終え、私は地元に戻ってきました。

待っていたのは研修医よりも責任が大きく、忙しい生活でした。

それでもできることが増えていく喜びは続き、新しい環境でも充実した生活をしているという実感はありました。

時々腹部膨満感や痛みが出ることは続いていましたが、研修医の時にもらった薬を飲むと治るので、もう慣れっこになっていました。

この薬がなくなっちゃったらどっか受診して処方してもらわなきゃなくらいなもんでした。

医師4年目の冬でした。

いつもの腹痛や早期膨満感がきました。いつものように薬を飲んで様子を見ていましたが、どうもいつもと違います。

いつもだったら長くても1週間くらいで良くなるものですが、1週間で良くなるどころか段々悪くなっていきます。

また、いつもの痛みはみぞおちのあたりで胃が痛いという感じでしたが、今回は段々下腹部が痛くなってきます。

さらにはには熱も出てきました。

症状が出てから2週目になると、痛みや発熱はさらにひどくなり痛み止めを飲んでなんとか仕事に行くという状況でした。

これはおかしいと思い勤務先の病院で血液検査とCT検査をしてみたところ、非常に高い炎症反応と腸の炎症が判明しました。

「虫垂炎」かなというような画像で、外科の先生に見てもらうと、一言「先生、これは入院だねぇ」と言われ即日入院とりました。

正直この痛みのまま日々の仕事を続けるのは限界だったため、入院と言われ少しホッとしました。

そのまま「虫垂炎」の診断で入院し、絶食と抗生剤の点滴が始まりました。

治らない「虫垂炎」と「クローン病」

入院し、抗生剤加療と絶食をすることで痛みや発熱は1週間ほどで段々良くなりました。

しかし、血液検査がなかなか良くなりません。

1週間後に食事を再開してみると、また腹痛が出てきてしまいました。

外科の先生も若い人の虫垂炎なんて抗生剤ですぐ良くなるのに、これはおかしいねと。典型的ではない経過のようでした。

一応症状が改善したので退院して経過をみることになりましたが、退院後またすぐに腹痛や発熱の再燃あり、数日後には再入院となりました。

外科の先生に再度診察していただき、虫垂炎のひどいものかもしれないから詳しい検査と場合によっては手術をしに大きな病院に行こうということとなりました。

転院した先の先生は画像を見て、「クローン病」かもしれない。言いました。

ひとまず、もう1週間虫垂炎の治療(絶食と抗生剤)をしてみて経過がどうなるか見てみるという方針になりました。

1週間後また症状は良くなりましたが、血液検査はスッキリしません。

食事を再開するとまた痛くなると前回と同じ経過になってしましました。

そこで、いよいよ「クローン病」の可能性が高くなってきました。

先生とも良く相談しましたが、クローン病は難病であり、専門性も高い病気のため、クローン病に慣れている先生に見てもらった方がいいということになり、クローン病の専門家のいる病院に再度転院することになりました。

転院後、胃カメラや大腸カメラ、小腸造影検査など数々の検査を受けました。

転院して1週間程度で「クローン病」診断がつきました。

早速クローン病に対する治療が始まりました。

治療開始後、数日で食事再開すると、腹痛は出ませんでした。

その後数日で退院し、1ヶ月程度の休職期間ののち、仕事復帰ができました。

まとめ

以上がクローン病という難病が診断されるまでの私の経緯です。

治療開始後2ヶ月程度が経ちましたが、現在のところ腹痛等の症状の再発はなく、元気に過ごしています。

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